引き戸の先に…
子供の頃住んでいた家は
ボロボロでだだっ広い遊び場のある不思議な家でした。
玄関は引き戸で
簡単に壊れそうなくるくる回す鍵がついていました。
晴れた日には日が暮れるまで外で遊び
もう相手の顔が見えなくなった頃走って帰り
「ただいまーっ!」と言いながら
その引き戸を勢いよく開けました。
引き戸の先には沈みかけた夕日が薄く差し込む
“下の部屋”と呼んでいた遊び場が薄闇に包まれていました。
“上の部屋”に用意されているであろう
あたたかいご飯と母の笑顔を想像して
わたしをほっとさせてくれる場所でした。
引き戸を開けた瞬間、薄闇に包まれた空間に
そんな懐かしい子供の頃の記憶が蘇ってきました。
たくさんの木箱が積まれたレトロでノスタルジックな空間。
その中のひとつ、一番小さな木箱が
新しい久奈屋の場所になりました。
ほんわりと灯りを灯す木箱の中には
クラシックカメラで撮った写真の葉書が納まっています。
なんだか、おうちに帰ってきたような
ほっとするその場所は西荻窪にあるニヒル牛。
木箱の中に広がる個性豊かな宇宙が
とっても魅力的なお店です。