『暦葉書』の作り方
雑司が谷の旅猫雑貨店にて開催中の
『実りの、久奈屋紙文具展』もいよいよ後半に。
そこで今回は、より久奈屋紙文具を
知って頂くきっかけになればと思い
『暦葉書 十二箇月 実り暦』の作り方について
少しお話しさせて頂こうかと思います。
久奈屋紙文具は大まかに分けると
ひとつひとつ消しゴム版画を
「手押し」して仕立てるものと
原画をもとに「印刷」して仕立てるものがあります。
『暦葉書』は後者の方。
最初に『暦葉書』を作ろうと思い立ったとき
数字まで全て「手押し」で制作しようと試みたことがあります。
ところが、まっすぐに「手押し」していくことは非常に難しく
手彫りのすこし歪んだ数字は、整然と並んでこそ
味わいがあるのだということに気が付きました。
それはモチーフに関しても同じことが言えます。
一枚一枚「手押し」の良さが活きるものとは
「モチーフがシンプルであること」が大事です。
(『和手紙』や『蔵書票』『しおり箋』などは手押しです)
『暦葉書』は背景とモチーフの組み合わせ
色の組み合わせなどが複雑に絡み合う
様々な要素を一枚の絵に仕立てる面白さを大切にしているため
そのバランスを壊さないよう
原画をパソコンに取り込んでからも何度も微調整を繰り返し
データを作り上げていきます(ここは、夫の出番)。
原画を、選んだ「紙」に「印刷」したとき
一番しっくりとくる「色」を探します。
このとき、原画の「色」を再現しようとするのではなく
「紙」に載せたとき、よりしっくりとくる「色」を
根気よく、ひとつひとつ確かめながら探すことになります。
「これだ!」という「色」を見つけたら
「家内印刷」の際、さらに各月ごとに調整を加えて
一枚一枚「印刷」の状態を確認しながら仕上げていきます。
久奈屋の『暦葉書』は一番最適な方法が
「家内印刷」だったというわけです。
今回の『暦葉書 十二箇月 実り暦』は
原画の作り方が今までと少し違います。
一月の『橙(だいだい)』を例にあげて流れを書き出しますと…
1.まず、背景の伝統文様「石畳」の版を手押しする
2.「橙と鏡餅」を描いた版を、鏡餅に見立てた白い「紙」に手押しする
3.2を外枠線で切り取り、さらに「橙」の実と葉の部分は線を残して切り抜く
4.3の裏から「橙」の実と葉に見立てた「紙」をそれぞれ貼る
5.4を1の背景に貼り付けて原画の完成
6.原画をパソコンに取り込み、あらかじめ取り込んでおいた数字と
組み合わせてカレンダーに仕立てる
7.6のデータを「家内印刷」し、同じく帯やパッケージも「家内印刷」する。
8.十二箇月分をまとめて帯で綴じてパッケージに納め
薄紙を掛けて赤い糸で綴じ、袋に入れ値札をつけて完成!
こうして出来上がった『暦葉書 十二箇月 実り暦』が
いま旅猫雑貨店にて販売中です。
そして今回は特別に、その「原画」十二箇月分全てを展示中です。
こちらは非売品ですが、是非商品と見比べてみてください。
「手押し」には「手押し」の「印刷」には「印刷」の
それぞれの良さを活かした久奈屋紙文具の数々を
この機会にご覧頂けたら幸いです。