柱時計と人魚姫と



その柱時計に出会ったのは
もう7年も前の夏の日
そこは入り口を入ると様々な古道具が雑然と並べられた
アートギャラリー雑貨店 ニヒル牛2
その日から古い柱時計の中が久奈屋の場所になった

いつか自分の方から離れる日が来るのだろうと
なんとなく思っていたのだけれど
柱時計の方から今年でサヨナラだよ、と告げてきた
さぁさぁもういい加減旅立ちなさいなと
お尻を叩かれたような気分になった
そうして、少し焦った
まだこの場所にふさわしい展示をしていない気がして

ニヒル牛2のレトロでノスタルジックな建物は築83年
老朽化により取り壊しが決まり営業は年内までと決まった
そんな時目にしたのがニヒル牛2の2015年・スケジュール



海展」と「むし展
気になったのは夏のふたつの企画展だった
一緒に遊ぶにはもってこいのような気がして



海展のモチーフは「人魚姫」だなと思いついて
自分でもちょっと意外だったけど
やっぱり「人魚姫」しかなかった

コドモの頃、テレビで観た人魚姫に酷く腹が立った
王子を助けたのは人魚姫なのに…
悔しくて悔しくて眠れないのではないかと
心配になるくらいに腹が立った
こんなに悲しい物語を書いたりした
アンデルセンを恨めしく思ったりもした
人魚姫なんて嫌いだ、ずっとそう思ってきたのに

ひょんなことからもう一度
あの悲しい物語と向き合ってみることになったのだ
やっぱり悲しいし悔しいけど
一途な人魚姫が自ら選び取った生き方だったのだなぁと
オトナになった自分は冷静に物語を受け止めてもいた
それは紙文具屋としての冷静な目があったからなのかなぁとも思う

人魚姫そのものは読む人
それぞれのイメージがあるから直接描くことはしない
ただ改めて読み返したとき
心に留まったコトバを拾い集めて
紙文具に仕立てていく

海の上の人間の世界に憧れ続けていた
六人姉妹の一番下の人魚姫が
ついに十五の誕生日を迎えたとき
真珠で作られた白ゆりの花かんむりを髪にかけ
高貴な身分のしるしに大きなかきを8つもしっぽにすいつかせて
ふんわりとあわのように水の上へとのぼっていく…

一番心に留まったそんな場面を
まずは一筆箋に仕立て中です

そして先日、ニヒル牛2の柱時計にも
夏の葉書や新作紙文具をたっぷりと納品致しました
販売中のLINEスタンプ
ハイカラ雑貨店 ナツメヒロにて7月に開催する
出張久奈屋のチラシもございますので
こちらはどうぞご自由にお持ちくださいませ

あと半年、久奈屋の場所として
ニヒル牛2の柱時計へ色々と紙文具を納品して参ります
またニヒル牛2のギャラリースペースにて開催の
海展、むし展、それからクリスマス展にも参加予定です

大好きな場所の最後の時を
一緒に過ごすことの出来る仕合わせを
たっぷりと楽しみたいと思います
皆さまもニヒル牛2の最後の企画展・個展の数々を
どうぞお見逃しなきよう


海中アパルトメント ~マボロシ荘~

2015/07/17 fri.‐08/05 wed.

ニヒル牛2 Gallery Space
東京都杉並区西荻北3-26-5
tel 03-6765-2286
JR西荻窪駅北口より徒歩7分
12:00~20:00(最終日~16:00)
木曜日定休
http://nihirugyubook.but.jp/nihirugyu.html

海中美術
・コヤヒロカ・6*umi・物音(オハラトモコ+matu)

参加者
・岩瀬亜理沙・うこわや・内田勝久・虹かけ屋・かの・川上りか
・北原裕子・近未来・魚眼亭・kuqi・the the・シュレ猫屋・白浜そよこ
・shiromamire・ジョウヂ・聖悟・seisa・たつみ・出口智絵
・中野区ベランダ動物園・ななを・natsumehiro・猫貝・bambi☆・久奈屋
・マンボウno.5/K・323・結んでひらいて・ユキベエ・juno


紙文具 久奈屋
Twitter @hisanayaにてつぶやき中
レトロな言の葉スタンプ販売中

hisanaya

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