キオクの庭に咲く



コドモの頃は
全く花に興味はありませんでした
本当に花の名前を知らないんだねぇと
よく母に呆れられたほど
それが年を重ねて
当時の母の年も越えた頃からか
花や草や木に興味をもつようになりました



そうして少しずつ
キオクの庭に咲く草花のことも
思い出すようになっていました
沈丁花や紫陽花やドクダミは
コドモの頃住んでいた古家の
小さな庭に咲いていました



金木犀は一人暮らししていた
アパートの玄関さきで馨っていて
スミレや山葡萄や寒椿や藪柑子は
物語や雑誌や俳句がきっかけで出会いました



どの花も実も佳いなあと思えるようになったら
するするとコトバも一緒に落ちてきました
そうして2年前に拵えたのが
「季めぐりの詩」シリーズ
久しぶりに消しゴムを彫って
カタチと色で描いたこのシリーズには
小さなヒミツがあります



それは花や葉に同じカタチを
ところどころ繰り返していること
分かり易いのは紫陽花の花
沈丁花のカタチと同じなのです
それは春夏秋冬とめぐる季節の草花を
同じカタチを繰り返して
季節のめぐりを表しているから

春の訪れを薫りで告げた
沈丁花の花は
やがて夏色の雨に染まって
ミズイロの紫陽花になり

夏の日のクモリ空に映えた
白い十字のドクダミは
やがて小さくオレンジ色に色づいて
秋の薫りを漂わせる金木犀になり

秋に実ったキツネが見上げた
山葡萄のまるい実は
やがて冬の寒さに赤くなり
雪でこしらえたウサギの目になりました

そうして雪から赤い実を守った
藪柑子(やぶこうじ)の葉っぱは
春の暖かい日差しを受けると
思い切り両手を広げて
沈丁花の花を捧げるのでした

春から夏、夏から秋、秋から冬
そして冬から春へと
めぐる季節の草花の図案の説明を
短い物語のように綴ってみたのは
2年程前の久奈屋つれづれ

弥生のおすすめ紙文具は
そんなキオクの庭に咲く花がモチーフの
「季めぐりの詩」の小手紙一筆箋 短冊です
定番の紙文具としても如何でしょうか


紙文具拵処 久奈屋
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hisanaya

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